テツモ女子 佐橋奈葉の今日も模型鉄!

初めまして、鉄道模型が大好きな少し不器用なモデラーです。 よろしくお願いします❗️

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2026-01-01から1年間の記事一覧

第76話 瞳に映る“もう一人”

◆瞳が語るもの 岳志は、厨房の暖簾をくぐった瞬間、ふと足を止めた。見慣れた奈葉の隣に、見知らぬ青年―― 亮太が、どこか落ち着かない様子で立っていたからだ。だが、その違和感は、すぐに静かな確信へと変わっていく。(そうか……奈葉は、前を向こうとしてい…

第75話 重ねる記憶と、ほどける現在

◆札内駅に降り立つ 「亮太くん、着いたよ」 奈葉は前方のドアへ向かい、運転席横の運賃箱に迷わず切符を入れた。 (これがワンマンってやつか。鉄道というより、バスに近い感覚だな) 亮太も同じように切符を入れ、ホームへ降り立った。 6月だというのに、ひ…

第74話 好きな人の前で

◆空腹の時間 奈葉と亮太は雑貨店を出ると、広小路商店街のアーケードを並んで歩き始めた。 奈葉の手には、先ほど買ったすずらんのチャームが入った小さな紙袋。 ときどきそれを確かめるように軽く揺らす仕草が、なんだか可愛らしく見える。 頭上に漂うやわら…

第73話 すずらんの贈り物

◆噴水モニュメント シルバーウィーク、帯広の駅前広場は十勝ならではの澄んだ初秋の空気が満ち、やわらかな光が差し込んでいた。 人の行き来はあるものの、どこか時間がゆっくりと流れているような静けさがある。 そのなかで、亮太は緑色のガラス張りの噴水…

第72話 不安を越えて、十勝へ

◆眠れないまま迎えた朝 シルバーウィーク初日の早朝4時半。 スマホのアラームが鳴り、亮太は浅い眠りからゆっくりと意識を引き上げられた。 前夜は、宿泊先のことを考え始めてしまい、なかなか寝つけなかった。 奈葉から伝えられているのは「1泊2日」という…

第71話 境界線の見える旅

◆動くべき時 亮太が奈葉との関係をなかなか進めないことに、祖母はしびれを切らしたように口を開いた。 「亮太、その彼女はあんたを『待っている』んだよ」 「待っている……?」 亮太が思わず聞き返すと、母がその言葉を受けるように続けた。 「そうじゃなき…

第70話 雨が連れてきた距離

◆雨の中の不安 激しかった雷鳴も次第に遠ざかり、空を割るような雨音は、いつしかアスファルトを優しく叩く音へと変わっていた。 奈葉は、雨水を吸って重くなったパンプスのまま、ホームセンターへ続く緩やかな坂道を小走りで上がって行く。 折りたたみ傘の…

第69話 雨のカーテンを抜けて

◆夕暮れの待ち合わせ 亮太は、駅近くにあるファストフード店の2階、窓際のカウンター席に腰を下ろしていた。 目の前には、半分ほど残ったアイスコーヒー。 結露した水滴が、トレイの上に小さな輪をいくつも描いている。 奈葉との待ち合わせは18時30分。 だが…

《第3章 帰還編》第68話 Me Before You

◆十勝からの帰還 あれは1週間前のことだった。 奈葉が「レイルフレンズ」の定例会に参加していた途中、兄から「母が体調を崩した」と連絡が入った。 その知らせを胸に、不安を抱えたまま彼女は急いで故郷の十勝へ向かった。 そして今日、ようやく東京のマン…

第67話 顔を上げろ

◆10年ぶりの扉 奈葉は、洋菓子店「ポプラ」の前で立ち尽くしていた。 ここへ戻って来るまでに、実に10年という歳月が必要だった。 レンガ造りの山小屋風の建物。 軒先で揺れる小さな看板。 その横には、寄り添うように一本のポプラが立っている。 10年という…

第66話 コンパスは別の方向を指した

◆静まり返った駅 奈葉は、札内駅に降り立った。 ドアが閉まると、新型のディーゼルカーは低い唸りを響かせて走り去り、青々とした牧草地の向こうへと消えて行った。 静かだった。 あまりにも、静かだった。 かつて毎日のように通った駅なのに、まるで知らな…

第65話 ひとつに繋がった線

◆スクラップブック 堀内が書斎の明かりを点けると、壁いっぱいの本棚と古びた木製の机が浮かび上がる。 書庫のガラス扉を開けると、乾いた紙の匂いが穏やかに広がった。 中には、全国紙の記者時代に手がけた記事がスクラップブックに収められている。 背表紙…

第64話 置き去りの時間

◆ルピナスの記憶 道端に咲き並ぶルピナスの花が、初夏の風に静かに揺れていた。 奈葉は立ち止まり、その紫と桃色の花穂をぼんやりと見つめる。どこまでも続くような花の列を眺めていると、不意に遠い記憶が胸の奥から浮かび上がって来た。 ——まだ世界が、今…

第63話 小さな記念日

◆喫茶室の余韻 六花亭の喫茶室を出ると、店内に満ちていた甘い香りは遠ざかり、冷たい空気が頬をかすめた。 今まで向かい合って座っていた余韻が、まだ胸の奥で静かに揺れている。 そのせいか、奈葉はすぐには言葉を探し出せずにいた。 外では、降り続いてい…

第62話 まだ恋人ではなくて

◆クリスマスのあと 洋菓子店「ポプラ」は、新年を迎えて穏やかな静けさに包まれていた。 クリスマスまで店内を満たしていた賑わいは消え、ショーケースの中には、いつものケーキが整然と並んでいる。 夕方―― 奈葉は布巾を手に、ガラスをゆっくりと磨いていく…

第61話 マフラーの忘れ物

◆クリスマスイブ、「ポプラ」の一日 12月24日――雪に包まれた十勝で、洋菓子店「ポプラ」は一年で最も忙しい日を迎えていた。 裏口のドアを開けた奈葉は、冷たい空気を吸い込み、白い息を吐きながら声をかけた。 「おはようございます」 店内から漂う甘いバタ…

第60話 いちごと指先

◆洋菓子店「ポプラ」 洋菓子店「ポプラ」の窓には、雪の結晶をかたどった電飾が静かに揺れていた。夕暮れ前の淡い光がガラスに反射し、店の中をほんのりと照らしている。 奈葉が木の扉を押し開くと、重く「ギィー」と軋む音が手のひらに伝わった。外の冷たい…

第59話 ルピナスの記憶

◆母のひと言 奈葉が十勝に帰省してから、早くも5日が過ぎた。 その朝も、家の中には昔と変わらない匂いが漂っていた。 母の作った朝食を、久しぶりに揃った家族で囲む。 兄の修一は、奈葉が帰って来たので、今日から仕事に出ると言う。 奈葉も、あと3日で東…

第58話 家の匂い

◆藤丸百貨店の記憶 車は広小路を抜け、西二条へと向かう。 左前方に、幼いころから見慣れた特徴的な建物が見えて来た。 奈葉は思わず声を上げる。 「ほんとに藤丸さん、閉店しちゃったんだねぇ。なんか寂しいね……」 藤丸百貨店は、道東で唯一の百貨店として…

第57話 家へ帰る日

◆退院の朝 音更の実家―― 奈葉のスマートフォンが光り、「ピピピ」と一定のリズムでアラーム音を鳴らした。 眠い目をこすって起き上がると、カーテン越しに差し込む朝の光が、ベージュのシーツに柔らかな影を落としていた。 今日は、母が退院する日。 それは…

第56話 十勝川の向こう側

◆夜の病院 病院のロビーには、夜ならではの静けさが漂っていた。 受付の照明は落とされ、遠くのナースステーションから、かすかな物音だけが響いて来る。 長椅子に並んで座ったまま、奈葉はしばらく言葉を失っていた。 修一の「よく帰って来たな」という声が…

第55話 空へ、故郷へ

◆駆け込む駅 奈葉は、亮太のミニバンが「めぐみ野駅」のロータリーに滑り込むと同時に、短く礼を言ってドアを開けた。 振り返る余裕もないまま、駆け出すように駅構内へと飛び込む。 6月の生ぬるい空気を感じながら、 自動改札にICカードをタッチし、階段を…

《第2章 十勝編》第54話 「早く帰って来い」

◆母の病と、見ないふり 奈葉は幼いころに父を亡くし、母と年の離れた兄の三人で暮らしていた。 大学進学を機に故郷を離れられたのは、兄が母のそばにいてくれる——そんな確信に近い甘えがあったからだ。 その母は、数年前から労作性狭心病を患っていた。 幸い…

第53話 撮るはずだった一枚

◆白樺並木の向こうに 音更(おとふけ)―― その響きは、遠い大地の匂いとともに、それぞれが十勝の記憶を呼び起こした。 堀内は小さく息をつき、懐かしむように口を開いた。 「そうか、実家は音更だったんだね。 ということは……音更高校かな? 近くに十勝牧場…

第52話 帯広という文字

◆静かな定例会 6月の定例会を迎えた。 今日は車両競作展のため、いつもの公開運転会は行われない。 奈葉は、どこかほっとしていた。 5月の3連休、ショッピングモールで開かれた公開運転会―― 視線を集め、言葉を選び、気を張りつめていたあの日とは違う。 ど…

第51話 鍵をかけた心

">◆余韻と問いかけ "> ショッピングモールでの公開運転会は、静かな余韻を残して幕を閉じた。 小さなレイアウトを作ったことはあったが、モジュール規格に合わせた製作は勝手が違い、思いのほか難しかった。 開催中はレイアウトの解説役を任され、観客の前で…

第50話 今そこにいる人

◆静かな店、静かな時間 レストラン街の賑わいから少し離れた階上に、その店はひっそりと佇んでいた。 ガラス張りの扉を開けると、外の明るさとは別世界のように、店内は落ち着いた照明に包まれている。壁際には整然とワインボトルが並び、カウンターの上では…

第49話 時間は早送りできても

◆最終日のざわめき 5月の3連休最終日、午前中から続く人の流れは、どこか名残惜しさをにじませながら、穏やかに進んでいた。 ショッピングモールで開催されていた公開運転会も、いよいよ最終日を迎えた。 今日もレイアウトの前では、子どもたちが輪になって…

第48話 観る側の景色

◆余韻と達成感 ショッピングモールでの公開運転会、初回の運転が無事に終了した。 奈葉は折りたたみ椅子に腰を下ろし、ペットボトルのお茶をひと口だけ含んだ。静かにふっと息を吐き、キャップを閉める。胸の奥には、先ほどまでの歓声の余韻がまだほんのりと…

第47話 150分の1の鼓動

◆音が会場を満たすまで ショッピングモールでの公開運転会に向け、モジュールレイアウトの設営が始まった。 奈葉と亮太は、白木や音響担当者と一緒に、マイクやスピーカーのチェックを始めた。 音響担当者は、ミキサーのつまみを回しながら、低い声でいった…

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